映画/トキワ荘の青春(1996・邦)

電子うさぎ

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ノンビリしたい時に丁度目に入った映画。

私は漫画家を知らないけれど、物を造っている以上、彼らのひたむきな雰囲気がとても心地良かった。

編集者の一言が心に迫った。

「人と同じことをしててはダメだよ」というニュアンスの言葉。


私は物を造る時、何とかして誰かの心が和んだり、少しウキウキしたり、フッと心が軽くなる作品を作り出せたらいいなと思っている。

情報を極端に減らして、それでも、古来から脈々と伝わっている「何か」を掴みたくて必死になっている。

自然の中で感じたそのままを形にするのは、私ごときでは無理だと思いながらも造らずにはいられない。

人に認められる前に、自分自身が楽しかったり、嬉しかったり、和んだり、心が軽くなったり、自然に触れた時の感覚を常に感じていなければ、何も降りてこない。

そういう事も、トキワ荘の住人達は知っていたのだと思う。

苦悩すればするほど、沸き立つものを描いていたのだと思う。


今も昔も、何かを作り出す仕事は苦しい。でも、やめられない。


トキワ荘の住人もそうだったのだけれど、私も、時々、ボーっとしている時がある。

そして、閃いたら止まる事無く紙に落としていかなければならないという状態になっていた。


私が作りたいものは、きっと、一生掛かっても「完璧」という物は作れないだろうと思う。

だからこそ、やめられない。


トキワ荘の住人で、漫画を描くのをあきらめた人がいた。

諦めるには、本当の勇気が必要になる。

辞めるという事は、自分の限界を知るという恐ろしい魔物を受け入れるという事だから。


もしかしたら、あまり売れなかったのかもしれないけれど、トキワ荘で兄貴のように頼れる人がいたからこそ、彼らは頑張れたのだと思う。

幸いなことに、私にも、どうしようもない時に「力を抜こうよ」と言ってくれたり、働きかけてくれる人がいる。

元々は、猫さんの近くに居たかったから、そして、つたない作品を笑顔で受け取ってくれる人がいたから、私は作り始めた。

目が見える限り、手が動く限り、体を動かせる限り、作り続けたいと思っている。


確かに、誰かが望んでいるものを作るための情報は必要なのだけれど、情報に流されてしまったらグラついてしまう。

全ての事に感覚を研ぎ澄ませて吸収しようとしているけれど、人の作った情報に振り回されないように、私はこんな田舎に居るのだと言い訳をしている。


トキワ荘の人たちが、なぜかとても身近な人たちに思えた。

邦画の柔らかさに救われた。


「仕事」と言いながら、好き放題なものを造らせてもらえている環境は、自分で手に入れたものだ。

でも、自然の雄大さと繊細さと厳しさや、人の心の微かな動きに助けられている。


この映画を観て、「やめられないんだよね・・・」と思った。


原作と監督と、俳優さんと、映画を作り上げた人たちに感謝さえした一本。



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最終更新日2018-11-26
Posted by電子うさぎ

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