銀河鉄道の夜/宮沢賢治

電子うさぎ

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この本で、私の目の前に座っていたのは、20年以上連れ添った猫さんだった。

目の前から消えてしまったネコさんが、どんな道を辿って、どこに行くのか、何が起こったのかが分からない時に読みました。

やっとまた本を読めるようになった時でした。

彼女がその生涯を終えてから三か月以上経っていました。


猫さんは、逝く一週間前に「逝くね」と私に告げました。

それからは、ほとんど眠らずに付いていました。

そういう時に、自分の体がなぜそこまで持ったのかは分かりません。

でも、その子が最期まで一緒にいてほしいという頼みを断るわけにはいきませんでした。


死出の旅路を一緒に辿る事が出来た事は、辛くても、幸いだったのかもしれません。

何も知らずに、彼女の最期を共に過ごす事が出来ないよりは幸いだったのかもしれません。


彼女の心臓が止まった時、瞳孔が大きく開く直前まで、お互いを見つめていました。

その後も、私は彼女の体と頭を撫でていました。


心臓が止まって、瞳孔が開いても、脳が機能し続ける時間があります。

幸いなことに、私はそれを知っていました。

だから、出来得る限り、彼女が感じていられる限り、撫でていようと思ったのでした。

優しい言葉をかけ続けようと思ったのでした。

一時も離れずに、その場に居ようと思ったのでした。


静かな静かな、だれにも邪魔されない時間が過ぎました。


銀河鉄道の夜のように、私は彼女と同じものを見て感じて一緒に旅をしていたのかもしれません。

見送る覚悟が出来ていたとはいえ、辛く悲しく、三か月以上たってから、やっと私は何が起こったのかが分かって、泣くようになりました。


ずっと以前から書棚に在った宮沢賢治の銀河鉄道の夜(新編/新潮文庫)を、今読んだのは、今だったからなのかもしれません。

122年前に生まれた宮沢賢治の優しい言葉が、ちゃんと今も届いています。


猫さんを亡くしてから、虹の橋という詩を読みましたが、その詩にはそこに至るまでの話は無く、その詩の内容をいきなり受け入れる事が無理な人が多いように感じています。

大事にしたら大事にした分だけ、愛情を注いだら、注いだ分だけ辛く悲しくている人の事にも想いを馳せています。


私は4歳の時に、マッチ売りの少女を読み、最期にマッチ売りの少女が暖かいお婆さんの居る場所に行った事を喜びました。

辛い辛い現実から離れて、暖かい場所で幸せになったマッチ売りの少女に対して「良かったね」と言うと、周りの大人は笑いました。

しかし、最期は、頑張って一生懸命に生き抜いて行きたい場所に行けたのは幸いだという想いは変わっていません。


懸命に生き抜いた、そのひたむきで真っ直ぐな瞳の光を、私は尊いと思います。





読書について言えば、明治・大正・昭和にかけて、焼き捨てられなかったであろう作家たちの貴重な本を読み続けていると、その当時の閉塞感は相当なものであったと感じています。
明治に西洋文明が怒涛のように押し寄せてきた時の混乱と、上層部との衝突が、文章や小説の裏側に如実に表れています。
近代日本史を読み解く時に、刀を筆やペンに持ち替えて闘い続けてきた人たちがいたからこそ、今の日本があるという事がよく分かります。

マスメディアに踊らされることなく、自分の信念を貫く姿勢、歯の一本や二本や奥歯が欠けた程度ではない程の力の入れように感じ入り、タジタジとなります。

彼らの目は決して濁らず鋭く見据えていたので、原稿を国の上層部から削除された箇所も散見されます。
しかし、その虫食いの状態の原稿をすべて埋めるように読んでいけば、その当時、何が起こっていたのかが分かります。
全てを削除できるほどの能力を持った人が上層部にはいなかったという事なのでしょう。
教科書や日本の教育で、ひた隠しにしている事を知るには、彼らの書いてくれた血の滲んだ文字の向こうにある事実に目を向けねばなりません。
それは、誰かに聞くのではなく、自分の目で確かめて感じるという事で、孤独な作業ですが、どうしてもやめられません。
よって、読書は図書館に留まらず、広く読むことにしています。

宮沢賢治という人も、辛い現実や上層部からの厳しい監視があるからこそ、これだけの優しい文章や言葉を紡いだのだと感じています。

それらを、寝る間も惜しんで読み、同時に仕事もできる現在は、現在の差し迫った危機感を持ってしても、贅沢な時代になったものだと思います。


そうやって、本を読んでいる間も、ずっと横で寝ていたり、膝の上でゴロゴロしていてくれた猫さんには感謝が尽きません。

時には、膝の上に居る猫さんに、優しい本を選んで声に出して読んでいました。

じっと聞いていた猫さんが、いつの間にやら眠ってしまうという事がよくありました。




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最終更新日2018-11-26
Posted by電子うさぎ

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